現時点の、診療経験を通じてブラッシュアップした見解を記しておきます。

 医療者として広義の愛着障害に注目する理由は、「愛着という概念を意識することに意味がある」「それでしか生きづらさが可視化されない人がいる」からです。明らかに生きづらそうにしているのに明確な診断がつかず苦しんでいる方が、愛着スタイル診断をして初めて自分の苦しみが数字で示される、そんなケースを見てきました。無料でできるので興味のある方は「愛着スタイル診断テスト」などと検索してみてください。安定スコアの低さがおおよその重症度を表すと考えられます。

 愛着障害がある方は、人々との深い結びつきを形成する能力に問題を抱えます。この障害があると、基本的な安心感がなく、人間関係で傷つきやすく、友達や家族との健全な関係を築くのが難しくなります。恋人や夫婦との関係が不安定であったり、仕事や社交活動に対して消極的になることが多いです。

 ここでいう「愛着障害」は、子供だけでなく大人にも当てはまる広い概念であり、医学的な診断名としての愛着障害とは異なります。その分、当てはまる方も多いです。

 愛着障害の根本的な原因は、親や保護者との関係にあります。虐待などの極端なケースだけでなく、否定的な評価をしたり、子供の求めに応えることができない保護者によっても起こります。後天的な養育環境が原因で、オキシトシン系の機能が育たずに発症すると考えられていますが、同じ親でも兄弟でスコアが大きく異なる場合があります。

「愛着スタイル診断テスト」などいくつかサイトがありますが、どれでもかまいません。

 安定スコアは高いほどよく、他のスコアは低いほどよいと評価できます。

(個人的な基準) 10未満…愛着の問題がある  5未満…愛着の問題が大きい

 周りの家族や友人と比較してみると、よりその数値の意味、差を実感しやすくなるのでお勧めです。同じような人間関係の出来事があったとしても、受け止め方が大きく異なるという現実を実感できます。

 原因を示すというより、現在の状態を示すものです。兄弟でもスコアが大きく違うことがあるうえに、そもそも安定的な愛着を得にくい子供も存在し、親のせいと100%言い切れるものでもありません。

 ただし、親子で愛着の問題は連鎖しやすく、親に愛着障害があると子供も愛着障害をきたしやすくなります。あなたが愛着障害を抱えるとき、親もまたそうかもしれません。

 まずは愛着障害について、関連した本を読むことをお勧めします。まずは問題を認識・理解するところから始まります。

 そのうえで、親との関わりを減らすと楽になることが多いですが、一方で、人と関わらないと治りません。当座のストレスを減らすためにも、安定的な関係を築けない親とはなるべく距離をとることをお勧めしますが、それ以外の方、友人や恋人など信頼できる相手を見つけて安定的な関係を築くことを目指しましょう。

 そのためにも、自分の体調・機嫌に常に注意することです。愛着障害があっても、機嫌がよければ人間関係で問題は起きにくく、機嫌が悪い時にトラブルになります。機嫌をとるためには、否定的になりがちな捉え方をポジティブに修正していく練習や、人への期待値を下げる認知行動療法的なアプローチのほかに、運動や抗うつ薬(SSRI)が有効な印象があります。手っ取り早いのは運動です。日常生活において、かなりの意識を割いて自分の機嫌を取りにいってください。

<子育てにおける注意>

 愛着障害がある方は子供に連鎖させないよう、自分の精神状態や養育環境を整え、子供への関わり方に注意することが大事です。子供が何を感じているのか、相手の求めに応じて反応し、求められていなければ余計な手出しをしないようにしましょう。自分のこう育てたいという思いよりも、子供が何を感じ、何を求め、何を嫌がっているのかを重視して関わりましょう。嬉しい気持ちや辛い気持ちを共有するが干渉はし過ぎず、基本は信じて見守り、求められた時に反応し、ありのままを愛しましょう。