認知症とは何か
認知症とは後天的な脳の障害により認知機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたした状態です。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症などに分類されます。本人にあまり病識がなく、家族に連れられて受診することが多いです。
認知症の目安
認知機能低下が自立を阻害する程度に進行した場合に認知症と診断されます。物忘れが多少進んでいるだけで生活機能が損なわれていないなど、軽度の認知機能低下にとどまる場合は認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と診断されます。
「薬を自分で管理できない」や「請求書の支払いができない」ことが認知症と軽度認知障害を分けるおよその目安となります。
認知症と診断されたり抗認知症薬が処方されると、運転はできません。
認知症の検査
症状の推移を確認するとともに検査を行うことで、診断していきます。認知症の種類や元々の本人の能力の高さによっては、HDS-R/MMSEの得点が高めでも認知症と判定されることがあります。
・改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)
30点満点で、一般に20点以下で認知症の疑いありと判定されます。
・Mini-Mental State Examination(MMSE)
HDS-Rと似た検査で、30点満点で、一般に23点以下で認知症の疑いありと判定されます。
・頭部MRI検査/頭部CT検査 ※当院施行不可
頭部MRI検査は頭の形態や萎縮を見るのに優れた検査で、頭部CTよりも高解像度で被曝もありませんが、強い磁場が発生するので、手術や事故や化粧などで金属が体内や皮膚にあると大変危険で実施できません。また、頭部MRIがない施設もあります。その場合は頭部CTで代用します。
血液検査と併せて行うことで、(せん妄を除いて)認知症以外の原因による認知機能低下をおよそ除外することができます。
・脳血流SPECT検査 ※当院施行不可
放射線の被曝はありますが、脳血流の分布から認知症のタイプを推定する手がかりが得られます。
認知症の薬
抗コリンエステラーゼ阻害薬としてドネペジル(アリセプト®、アリドネパッチ®)、ガランタミン(レミニール®)、リバスチグミン(イクセロンパッチ®)があります。
また、NMDA受容体拮抗薬にメマンチン(メマリー®)があり、気分を穏やかにする効果があります。
これらは認知症のタイプや症状、重症度、年齢、既往歴、本人や家族の意向によって使うか、使わないかを決めていきます。
2023年12月に日本で発売されたレカネマブ(レケンビ®)は「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」および「軽度のアルツハイマー型認知症」に適応がある点滴治療ですが、投与可能な病院は限られており長期の通院と検査を必要とすることから、希望する方はあらかじめ該当する病院に問い合わせることをお勧めします。
家族が認知症になったときの心構え
現在、認知機能低下を予防する特効薬となるような薬はありません。ある程度進行するのは許容しつつ、本人も周りも穏やかに暮らすことを目標にしましょう。介護認定を受け、ケアマネージャーと相談して介護サービスの利用を促してもよいでしょう。
ただし、何らかの役割を持つことや、散歩などの運動は寝たきりや認知機能低下の予防にとって重要なので、転倒に注意しつつ、動けるうちは少し頑張って動いてもらいましょう。