※ ここでは、精神医学的な診断基準と関わりのない広義の愛着障害を扱います。

なぜ愛着障害に注目するか

 精神科医として広義の愛着障害に注目する理由は、「愛着という概念を意識することに意味がある」「それでしか生きづらさが可視化されない人がいるから」です。明らかに生きづらそうにしているのに明確な診断がつかず苦しんでいる方が、愛着スタイル診断をして初めて自分の苦しみが数字で示される、そんなケースを見てきました。無料でできるので興味のある方は「愛着スタイル診断テスト」などと検索してみてください。安定スコアの低さがおおよその重症度を表すと考えられます。

愛着障害とは何か

 愛着障害がある方は、人々との深い結びつきを形成する能力に問題を抱えます。この障害があると、友達や家族との健全な関係を築くのが難しくなります。

なぜ愛着障害が起きるのか?

 愛着障害の根本的な原因は、親や保護者との関係にあります。虐待などの極端なケースだけでなく、否定的な評価をしたり、子供の求めに応えることができない保護者によっても発症します。同じ親でも兄弟でスコアが大きく異なる場合があります。

愛着障害の典型的な症状

 人々が一般的に感じる安心感が欠けています。人間関係の問題が続くことが多く、恋人や夫婦の関係が不安定になったり、仕事や社交活動に対して消極的になることが多いです。

診断の範囲について

 ここでいう「愛着障害」は、子供だけでなく大人にも当てはまる広い概念であり、医学的な診断名としての愛着障害とは異なります。その分、当てはまる方も多いです。

愛着障害の克服方法

 愛着障害について、診察室でできることはそう多くありません。愛着障害を克服する第一歩は、自分にこの障害があると認識することです。次に、信頼できる友達や家族を見つける、または誰かにとって信頼できる存在になるよう努力することで年単位ですが、克服できる可能性があります。親とは距離を置いた方がうまくいくことが多いです。参考になる本はいくつか出ているので、おすすめの本をクリニックの本棚に置いておこうと思います。