薬を使わずに治療してほしいと言われた際に、特に不安が強い成人に対して、それでも抗うつ薬を勧めることがままあるので、その理由を3つ説明しておきます。
- 不安は薬が効きやすい
数ある精神症状の中でも、不安に対する抗うつ薬の奏効率は高いです。副作用で抗うつ薬の中で薬を変更することも多いのですが、内服を続けられさえすればよくなったことを実感しやすいので、おすすめの処方です。
- 薬に対しての過剰な不安
不安が強い方は往々にして、薬に対しても過剰な不安を抱いています。インターネットや添付文書で調べることで、不安が増幅されています。
私の場合、抗うつ薬を開始する際は自己判断で中止してもらっていい、その前提で処方しているので、しんどくなれば中止していただければ短期で問題となるような副作用は速やかに改善するはずです。吐き気や眠気は出やすいですが、出たら出たで吐き気止めを飲んだり、抗うつ薬を中止すればそれで構いません。抗うつ薬には基本的に依存性もありませんので、その点、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬とも混同しないでいただければ助かります。
- 薬を使わないと非効率
不安が強い方に対して薬を使わない治療をメインにすると時間がかかりがちで、かつ奏効率も低いです。保険診療の枠内で継続的に治療を行うことが困難になることもあり、その場合はカウンセリングなど他の治療を検討していくことになります。
「薬漬けになるのではないか」といったイメージ、あるいは「薬に頼ることへの抵抗感」も感覚的には分かるのですが、それはどちらかというとベンゾジアゼピン系の薬に対して抱くべきイメージであって、抗うつ薬に対してもそう思われることを非常にもったいなく感じています。抗うつ薬が奏功しそうな方は、まずは薬を使ってでも安定した状態に到達して、そこから運動習慣をつけながら薬を減らすのがオススメです。
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